U.minutissimaを探して
甘 俊輝
シンガポールに分布するUtriculariaは全部で7種類が知られている。以下に種名と現在の状況を記す。
2 U.caerulea(普通種)
2 U.bifida(普通種)
2 U.aurea(希少種)
2 U.gibba(希少種)
2 U.uliginosa(絶滅)
2 U.punctata(絶滅)
2 U.minutissima(希少種) *ライラック色で大型の花の系統と、藤色で小型の花の2系統が知られている。
シンガポールサイエンスセンターにて食虫植物展が開かれた。その期間中の日曜日にTanWeeKait博士に同行して自生地調査へ赴いた。目当てはU.minutissimaでこれを展示に出そうというのが目的である。
最初に行ったところは泥炭地のDairy Farm Roadである。ここは別に牧草地というわけではなく、牛なぞ影も見えないが、とにかくFarmと名がついている。この土地は広大な草原でMinosa pudica が優先種となっている。わたしたちは草原内の泥炭地を調査し、ライラックタイプのU.minutissimaを発見した。水浸しのところには生えず、水面より数cmほど高いところに数株ずつ固まって生えていた。研究用に少量の株を採集した後、周囲を良く調べてみたが、陸上性のUtriculariaはあまり見つけられなかった。二ヶ月前の雨期の時に来ていれば、もっと多くの株を見ることができたものと思われる。しかし、その時期になるとこの当たり一面は水浸しになる。
もうひとつのタイプのU.minutissimaはBukit Timah Nature Reserveで見ることができた。Pan Island Expressway とMacRitchie Reserveの間にその自生地はある。ここにはさまざまなタイプのN.gracilisが雑草の如く生い茂っている。目的であるU.minutissimaはたいそう目立たぬ植物であるから探すのも苦労する。水路沿いに目を皿のようにして探すこと数十分、やっと発見することができた。まず、U.bifidaの鮮黄色の花とU.caeruleaの白い花が目に入る。株数はU,bifidaが勝っている。そして遂にその中に混ざるようにして咲いている藤色の花を発見した。BINGO!
このタイプはライラック系に比べて花の大きさが半分くらいである。また、夜明けに開花し、日没とともに閉花するのでかなり見つけにくい。さらに歩いて小さな流れのあるところに出る。流れの端の泥水がよどんだ当たりには泥が累積しており、その表面にU.gibbaが生えている野を発見した。水中には進出できないらしく泥の表面に限り繁茂している。踏み込んだらあっという間に足をとられそうな泥炭であったので、採集することはできなかった。
ここは例によってN.gracilisが繁茂しておりその中には紫色の袋をつけるタイプもある。また、下草に混じって
N.ampullariaも多数自生していた。
帰路は別のルートを辿った。道沿いにNepenthesが多数生えており、優先種である様子が見て取れる。目立つのは俗にシンガポールジャイアントと呼ばれる大型のN.ampullariaでちょうど満開であった。無数に生えているN.gracilisも同じく盛んに開花していた。両者間ではまれに自然交雑種ができる。
U.minutissimaの2系統の分布を異にする原因は何であろうか?いずれの自生地も見た限りでは環境条件に差はない。もっとも何かしかの原因はあるのであろうとDrTanは考えている。今度土壌のサンプル採集がなされ、研究が進めば解明できるであろう。
食虫植物の自生地はどこもたいてい日当たりが良く、泥炭か小石混じりのすなじ砂地で、酸性で水浸しと揃っている為、まず農業用地には使われない。ただ、何ぞの開発というときには真っ先に目をつけられる土地であるだけに、早急かつ慎重な保護が必要となってくるのであろう。
Utriculariaの類はやはり泥炭に群生していることが多い。マット状に繁茂している様子は圧巻である。砂利系のところにも結構生え、見た感じとしてはこちらのほうが綺麗である。ただ、驚くべきことはU.caeruleaでかなr乾燥したところでも元気に花を咲かせている。そればかりか水面にオイルの膜が張って蚊がワンサと湧いている様な所にまで生えている。弱々しく見える割には結構丈夫なものである。この強さを持ってこれからもこの地で異や、世界でしたたかに生き続けてくれることを願わずにはいられない。